今日のカグヤクルー日記

クルーそれぞれの理念の実践や気付きを交代で掲載しています。

2016/07/26

「受け継ぐ」

こんにちは。女将です。

カグヤでは理念研修や出張の際、
よく訪問前などに地元の神社を参拝します。
そのせいもあるのか、
東京に出てからすっかり縁遠くなってしまった神社が
また身近に感じるようになってきました。

もともと産まれ育った会津は神事が多く、
ことあるごとに神主を呼び祝詞をあげてもらったり、
集落ごとにご婦人たちが集まり
毎月、唄詠みの練習を行っていました。

特にこの唄詠みは
古くから会津に受け継がれてきた風習で
手のひらほどの大きさの平らな鐘を
ゆったりとしたリズムで叩きながら、
それに合わせて会津三十三観音御詠歌を
独特の節回しで詠みあげるもので、
法要の際には、地域の女性たちの手によって
必ず執り行われるものなのです。
そのため会津に嫁入りした人は皆、
これを習うことになるのです。

残念ながら高校卒業と同時に上京してしまった私は
会津のこうした風習を何一つ受け継ぐことはありませんでした。
それは、母がもともと会津の人間ではなかったからかも知れません。
毎年、正月には必ず作る郷土料理の「こづゆ」も
本当の会津の味になるまでには何年もかかったと言います。
生前、母はよく「お母さんは会津の生まれじゃないから、
やっぱりよそ者なのよ・・・」とこぼしていました。
それほど会津という風土は独特で、
嫁入りしてから何十年経ってもなお、
戸惑うことが多かったのだろうと思います。

それでも母は亡くるとき、近所の人にお別れがしたいと、
遺骨を会津の家に連れて行ってほしいと言いました。
でも母の死を伝えようにも、かつてのクラスメートは
皆、東京に移り住んでいるか
他所へ嫁いでしまっていています。
しかも、両親が亡くなるまでの約一年間は
福島市内の病院に入院していたので
ご近所の方も、私たちの家族のことなど
記憶から遠のいているだろうと思われたのです。

結局、誰にも連絡しないまま
福島市内で葬儀を済ませ、
遺骨を会津に持ち帰えりました。
すると、どこで知ったのか
近所のお母さんたちが雪の降るなか訪れ
母のために唄詠みをしてくださったのです。

その雪に染みてゆく鐘の音と
母のために静かに響く唄が、
母が、とっくに会津の人間だったことを
教えてくれているようでした。

今は、姉が正月にこづゆを作ってくれます。
これは母が亡くなる前、姉がお願いして
レシピを書いてもらったのだそうです。

今更ですが、今年はこの「こづゆ」を
姉と一緒に作ろうと思っています。
自分の産まれ育った故郷で
ずっと受け継がれてきた文化を
私ももっと大切にしようと思います。

ミッションパート
佐藤真樹