今日のカグヤクルー日記

クルーそれぞれの理念の実践や気付きを交代で掲載しています。

2016/09/26

「時を嗜む」

こんにちは。女将です。

私たちがいま再生している古民家、
「聴福庵」では煮炊きのすべてを炭火で行います。
そのため当然時間もかかります。
手間もかかります。

お茶も、火鉢にかけた鉄瓶で沸かした湯で淹れます。
ですからお茶を飲もうと思い立ってから飲めるまでには
多少、時間を要します。
もちろん、食事の支度にも相当の手間と時間がかかります。
一瞬で火をつけたり出来ませんし、
微妙な火加減も簡単ではありません。
当然、片時も目を離すことはできません。
そこまで手間暇かけても、火加減ひとつで
出来上がりがうまくいかないことだってあるのです。

今の暮らしは数十秒でお湯が沸き、
捻れば勢いよく炎が立ち上がり、
ピピッと指一本で
放っておいても料理が出来上がります。
短時間で簡単においしく、
自由に時間をつくりだすもので溢れています。
本当に便利な世の中です。
私も例外ではなく、
東京ではそんな便利な生活を送っています。
毎日、自分の都合に合わせ
時を過ごしていると思っていました。

でも聴福庵に暮らす中で、
それは逆に時間に縛られているのではないか
と思うようになりました。
聴福庵での生活は、
決してこちらの思い通りにはなりません。
時間を自分の都合に合わせるのではなく、
時間に自分を合わせなくてはならないのです。
一見すると、とても不便で、不自由に思えます。
でも実は、何よりも贅沢で
豊かなことだということに気づかされます。

お湯が沸くまでの時間、
いつもより長めに本を読んだり
たまには手紙を書いてみるのもいいかも知れません。
ご飯を作る時間、
火と対話しながら美味しい料理をつくることだけに
一生懸命になれることも
普段、あまりないのではないでしょうか。

本来、暮らしとは
時間に寄り添わなければ
成り立たないものなのかも知れません。
「時間を上手に使う」という言い方をしますが、
時間を自分の都合に合わせてやりくりすることが
上手につかうことではなく、
どれほど豊かで濃いに時間できたかが、
本当の時間を上手に遣うということではないかと感じます。
日常に忙殺され、
時間を我が物顔で都合よく過ごしてしまわないよう
日々、心掛けていきたいと思います。

ミッションパート
     佐藤真樹