一つの価値観や一つの具体的な生き方を目指すために、組織が「理念」を立ち上げると、その具体的な価値観や生き方以外の価値観を持ったり、生き方をする組織の人間は、「不適合」や「不足」といった表現がされます。
これは、自動車を作るために設計図があり、その設計図に合う部品を作ったり集めたりしていくやり方で、「エンジニアリング」というそうです。計画が先にあり、「PLAN DO SEE」のやり方です。計画に向けて合わない部品が出てくると、部品を改善するか、不良品として製品から除外する形です。
年齢別の保育や一斉画一的な保育では、「年齢」や「その時の到達目標」といった「PLAN」で子どもを評価するためにそういったやり方が出てきます。
反対に多様な価値観や多様な生き方を保証するために、組織が「理念」を立ち上げると、一人ひとりの多様な価値観や生き方を保証しながら組織の永続が出来るためには、一人ひとりが組織に対する自立した「貢献」と、仲間の多様性も尊重する「共生」の考え方が必要になると同時に、組織自身もそれらを引き出すマネジメント(運営の仕組み)が必要になってきます。
これは、先ほどの自動車を作るための設計図とそれに近づけていく「エンジニアリング」のやり方とは、真逆です。自動車という先に「PLAN」があるのではなく、そこにいる人たちの価値観や生き方が掛け合わされた中で育まれていくものであり、何が出来上がるかがありません。それは、種を植えても、どんな時期にどんな大きさで、どんな風に育っていくかが分からない「植物」に例えられます。これはブリコラージュと呼ばれ、寄せ集めで何かを作ったり、繕ったりしていくという、「今、あるものを活かして工夫していく」というやり方です。
異年齢児保育、選択制、習熟度別の保育の中では、今日何が行われるかや、どんな風に育っていくのかは、そこにいる子どもたちや環境設定を手伝う先生たちといった、「今、あるものを活かして工夫した」総和です。
「誰かが決めた価値観」に向かっていく運営スタイルには、先が見える安心感があります。そして価値観が合えば活かされる安心感があります。そして価値観が近い人と働ける安心感があります。
そしてまた反対に、「多様な価値観」を目指すスタイルでは、何が生まれるか分からないワクワクや、今を活かして行く「生きる力」が育まれること、価値観を超えた共生や貢献の体験などを通して「多様な社会」を作り出す楽しみがあります。
改めて、保育とは「社会」を「地域」を作り出す大切な役割であることを実感します。
ミマモリスト 眞田 海