秋の彼岸に見頃を迎える彼岸花は「葉見ず花見ず」といわれるように、花が咲いている間は葉を出さず、花が散ってから葉を伸ばすのだそうです。
通常、植物は芽を出すと双葉が開き、そこから本葉が出始め、茎は枝分かれしながら伸びてゆき、それぞれの枝にたくさんの葉が茂ります。
葉が十分に茂ると蕾がつき、やがて花が開きます。
そして花が枯れると種ができ、落ちた種からまた次の年に芽が出ます。
多くの植物は、こうして冬の厳しい時期を種の状態で越し、温かくなって芽吹きます。
ところが彼岸花は暖かな春も、暑い夏も土から顔を一切出すことはなく、夏が終わるころ急に茎だけを伸ばし始めます。
葉も枝もないただ真っすぐに伸びた一本の茎は、風に秋の気配を感じ始める彼岸ころ花を咲かせます。
そして花と茎が落ちると、ようやく葉が茂り始めます。
通常の植物が根や葉の光合成から栄養を得て花を咲かせるのとは違い、彼岸花は一年間、土の中で球根に溜め込んだ栄養を上手に分け合って花を咲かせ葉を伸ばします。
花は、咲いてから散るまで一週間ほどで、そのうち見ごろは僅か2~3日間なのだそうです。
葉は花が散るその時をじっと待ち、花もすべての栄養を使い切ることなく僅かな時間咲き誇り、葉のために養分を残します。
そうして葉と花が互い思いやり命を分け合っているのです。
彼岸花には不吉なイメージや悲しい逸話が多く、花言葉もあまりいいものはありませんが、こうした花の咲き方から「相思相愛の花」ともいわれるそうです。
花でさえ互い命を思いやるのに、世界のどこかでは人間同士で命を奪い合っている。
それを思うとやり切れない気持ちになります。
誰もが互いを慈しみ合って、その命を伸ばし合えたならどんなに素晴らしいでしょう・・・。
せめて自分の中に、いつも誰かと命を分け合っているという意識意を持っていたいと思います。
ミッションパート
佐藤真樹