「一利一害」という言葉の本当の意味に先日出会いました。
私自身の解釈では、
「一理あるものの裏側には、一害がある。良いと悪いは表裏一体である」
というような意味で考えていましたが、
調べてみるとこの言葉は、
世界史上最大のモンゴル帝国を築いたチンギス・ハーンと
その後継者オゴデイ・ハーンのブレーンであったと伝えられる
耶律楚材(やりつそざい)が生涯の座右銘とした言葉であることを知りました。
「一利を興すは一害を除くに如かず。一事を生かすは一事を省くに如かず」
(利益となる事を一つ始めるよりは、従来からの害になることを一つ除いた方がよい)。
これは補佐役たる者の最も重要な心構えといってよく、
自ら新しい事業を興そうとか華々しい勝利を得ようとするのではなく、
どこに問題があり、どれを除けばよいかを常に考えなければならないのである。
と解説がありました。
確かに、樽に穴が開いていれば、水を足すのではなく、穴をふさぎます。
過去にしてきた事業の問題、損害、過失をそのままにして、
新たな事業でそれを補填しようとしていても、
「問題を直視する文化」や「問題から学び福に転じる文化」は
生まれません。
ほとんどの問題は、組織に存在する個人の性格や刷り込みの問題ではなく、
組織の基礎を危うくするものはその組織が持つ細かな悪習慣であり、
ましてや事業やビジネスアイディアそのものではないのだと教えていただいているように
そう感じます。
組織が円滑に動くように自らを黒子に徹した耶律楚材の働き方は、
他人から評価されることを原動力としている人間には真似することが難しく、
むしろ華々しい新規事業や自らの業績が目に見えやすい働きを得意とします。
無いからやる。使っていないからやめる。
ではなく、
なぜないのか。なぜ使わないのか。
その本質を見極め、その課題解決に誰かを動かすのではなく、
自分を環境として捧げていく黒子としての覚悟。
これは、自分主体の働き方や生き方では難しいということを
教えて下さっているのかもしれません。
少しずつ、この意味を深めていきたいと思います。
ミマモリスト
眞田 海